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『一歩にまつわるエピソード』ご協力ありがとうございました。

映画祭実行委員の遥はるみです。
「一歩にまつわるエピソード」への募集、26日(日)を過ぎましたので、締め切らせていただきます。ご協力ありがとうございました!

皆様からお寄せ頂いた素敵なメッセージを整理しながら、何度も読み返し「受付担当をさせていただいてよかったなぁ」と感謝です。
パンフレットを楽しみにしていてくださいね!

では、6月30日映画祭、江戸東京博物館でお会いしましょう。

チケットまだだよ~という方は、こちらからどうぞ。

■チケットのご購入について

※前売り券のご購入は、2013年6月25日まで。
  ゆうちょ銀行へのお振込によるチケットのご購入をお願いします。

 □ウェブからのお申し込み

下記のフォームへ必要事項を入力して、お申し込みください。
http://www.citylights01.org/eigasai/ticket.html

 □メール・電話・FAXによるお申し込み

電話・FAXの方はシティ・ライツ事務局(03-3917-1995)まで。

メールの方は、宛先 eigasai6@citylights01.org /件名に、「映画祭チケット申し
込み」と書いて、
本文に下記の項目を明記の上、お申し込み下さい。
1.お名前
2.フリガナ
3.チケットの種類(作品名)と枚数
4.チケットの送り先(ご住所)
5.電話番号
6.駅からの誘導希望の有無 (JR両国駅 /大江戸線両国駅のいずれか)

※ なお、前売りチケットは 1作品:800円/2作品セット券:1500円 の2
種類となります。


■お問い合わせ■

バリアフリー映画鑑賞推進団体 シティ・ライツ
TEL・FAX 03-3917-1995
E-mail eigasai6@citylights01.org

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2013/05/29 07:46 |お知らせCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 6


勉強会の昼休み。
「周人くんは、どうして映画監督になろうと思ったの?」
はるみが、話しかける。
「去年の映画祭に、おばあちゃんと一緒に行ってカッコいいなと思ったんだ。」
「そうなのね。」

昨年、第5回シティライツ映画祭のゲストは是枝裕和監督。今朝のニュースで是枝監督作品『そして父になる』が、カンヌ国際映画祭でエキュメニカル賞特別表彰を受けたと報じられた。
*エキュメニカル賞とは、プロテスタントとカトリック教会の国際映画組織「INTERFILM and SIGNS」によって選ばれた審査員から贈られる賞で、人間性の内面を豊かに表現した作品に贈られる。(シネマトゥデイ 5月26日(日)1時2分配信 記事より)

「今年のシティライツ映画祭のゲストの久我和巳先生は、福島こどものみらい映画祭の実行委員長でね、地元の小学校で「こども映画学校」と言う取り組みをやっているのよ」
「こども映画学校は、どんな学校なのですか?」
「映画作りのプロが、小学校の児童たちと短編映画をつくる取組みで、今回のシティライツ映画祭でも、そのメイキング映像が流れるわよ。」
「本当ですか?ぼく、参加したい」眼を輝かせる周人。
「ええ、本当よ。参加については、ちょっとわからないけれど、映画祭で映像を観たらとっても良いと思うわ。」

「あぁ、そういや、昭和の良き福島の映像もあるんだろ。」音松がしみじみ語る。
「今、福島の映像と言うと震災後の映像ばかりだ。だけど、その前には人々の生活があった。豊かな自然や、路面電車が走る街並み、子どもたちがのびのび遊んでいた。忘れちゃいけないよ。」
「いい時代でしたね。」感慨深げに勢津子がうなずく。
「再会できるのですね。その時代に・・・。」
「ほんの15分くらいの映像だけど、あたたかい気持ちになれると思います。」
「僕が生まれる前の話?」
「ああ、そうだよ。おじいちゃんが元気だったころだよ。」
勢津子の瞳が少しだけうるんで見えた。


第6回シティライツ映画祭公式ホームページ
http://www.citylights01.org/eigasai/2013.html

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 5


遡ること、5月2日。東京・田町にある障害者福祉会館の部屋には、ゴールデンウィーク中であるせいか、若干少なめではあったけれど、緊張した面持ちの面々が集まっている。『どら平太』の音声ガイド勉強会の第一回目である。
この日、モニターとして初めて参加する勢津子は、ひときわ緊張した様子で座っている。
「おばあちゃん、大丈夫だよ。」周人が小声で勢津子に話す。
周人は小学校が開校記念日でお休みの為、今日は勢津子と一緒にやってきたのだ。

モニターとは、音声ガイドを制作していく過程で、わかりづらい表現やガイドを入れて欲しい箇所、無くても良い箇所などを、視覚障がい者の立場からモニタリングを行い意見を出し合っていく仕事で、ガイドづくりの重要な役どころのひとつである。

勉強会の日をうっかり忘れるところだったリーダーが、慌て顔で到着するのを待って、勉強会がスタートした。

「『どら平太』は、亡くなった夫が大好きだった映画でした。私が惚れていたせいもあるでしょうが、夫と重なるところがありましてね。思い切りが良いと言うか、男っぷりが良いと言うか。今回、モニターとして参加することを亡くなった夫が背中を押してくれた気がして…一所懸命に頑張りたいと思います。」
勢津子は、自己紹介を終えると、ほっと息をついた。
「じゃあ、隣の周人くん。」リーダーが促す。
「ぼくは、桐山周人です。将来、映画監督になりたくて、今日は、おばあちゃんにお願いして、見学に来ました。よろしくお願いします。」
「周人くん、よろしく頼むよ。いい映画を撮ってくれよなぁ。」音松が嬉しそうな顔をしている。
「シュートくんのお父さんはサッカーが好きなの」
同じくモニターで参加しているはるみが話かける。
「うん、サッカーも好きだけど。でも名前の由来はね、えっと、何だっけ。」
思い出そうとする周人。
「漢字は周りの人と書くんですよ。」勢津子が話しを受ける。
「周と言う字がね円や輪を描くって意味があって、人との繋がりを大切に思う人間になって欲しくて、決めたんですよ。」
「素敵な名前ですね。」はるみが声をはずませる。
「いい名前だ。」
音松もうなずいている。

「じゃあ、そろそろ、勉強会を始めましょうか。」
リーダーが、リモコンの再生ボタンを押す。
いよいよ、音声ガイドづくりのスタートである。

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 4

4
「一歩にまつわるエピソード、たくさん集まるといいね。」
リビングのパソコンに耳を傾け、メールチェックをしているエルザ。
アメリカでの生活ももうすぐ2か月になる。
「エルザの一歩ってどんなこと?」
元気が、キッチンから声をかける。
「うーん。」
「コーヒー淹れたよ。」
リビングテーブルにマグカップを置くと、エルザの手をカップの持ち手に
そっと触れさせる。
「ありがとう。 なんか、こういう時間ってホッとする。」
「そうか、良かった。」元気がコーヒーを口に運ぶ。
「私の一歩は、良く覚えてないけれどアフリカで発見された時と、パパに虹色のネクタイをプレゼントした時、あと、子供のころ元気に出会ったこと、大学に入ったこと、結婚したこと、アメリカに来たこと。」
ひとつひとつ指で数えていた元気が、優しく見つめる
「もう六歩も進んじゃったのか。」
「ん?多い?」
「俺は、まだ二歩。 子供の頃エルザにケガをさせてしまった後悔の一歩と、エルザと奇跡的な再会を果たして結婚したこと。」
元気はエルザにメロメロなのである。
「でもさぁ、一歩って不思議だよね。シティライツをつくったリーダーの一歩が、みんなの一歩につながって、さらに多くの一歩になるのって素敵だね。」
「そうだな、俺たちの一歩も。」元気がエルザの肩を抱く。
「パンフレットの「一歩にまつわるエピソード」がまた誰かの一歩につながるって考えたら、ワクワクしてきたよん。」エルザはそう言うと、パソコンに向き直りメールを打ち始めた。
「俺は、もう送ったよ。」元気が得意げな顔をしている。
「なんて?」
「職場に向かう第一歩、エルザの「いってらっしゃい」が元気に元気を与えてくれる。」ってね。
「うん、座布団一枚!」
「えーっ、一枚だけ?」
「だって、駄洒落じゃない。私は俳句にしようかな?あっ、川柳もいいかもね。ふふっ」
ま、新婚さんのお話、おあとがよろしいようで・・・。

「一歩にまつわるエピソード」募集詳細はこちら↓
http://eigasai2013.blog.fc2.com/blog-entry-3.html

文字訳(書き起こし)ボランティア募集

シティライツ映画祭実行委員パンフレット担当です。

私たちの映画祭は、バリアフリー映画祭。パンフレットもバリアフリーを目指しています。視覚に障がいのあるお客様に配るパンフレットと聞くと多くの人は点字を思い浮かべます。でも、少し考えてみてください、今、自分が視覚障がい者になったら・・・。すぐに点字が読めますか?私たち映画祭のパンフレットは文字を言葉に訳す『音訳』されたCDをお渡しします。作品紹介やみなさんからのコメントは、「音訳者」とよばれるボランティアの方が読んでくださるのですが、その逆があっても良いのではないか。と思ったのです。
 映画祭の音声ガイドづくりや、字幕を読む声優ボランティア、音声ガイドのわかりづらい部分を視覚障がい者の立場でコメントしてくださるモニターの方、みなさんの生のお話を、「対談のかたちでCDに入れようではないか。」と思い立ったのです。
 そして、「言葉(音声)を文字に訳そう」と言うことになりました。
ですが、そこで、私たち映画祭実行委員の印刷チームは立ち止まってしまいました。理由は・・・手が足りないのです。10名の方が協力してくださると、一人、5分程度の言葉(音声)で良いのです。
お礼は「ありがとうございます。」の言葉だけになってしまって申し訳ないのですが、ご協力いただけたらうれしいです。
良かったらご協力をお願い致します。

<詳細>
-作業の流れ-
音声データをメールにて送付(MP3)
エクセル又はテキスト、メールに書き起こし
ていただきます。(やりやすい方法で大丈夫です)

期間
① 5月20日(月)音声データ送付(5名による対談予定) 締切5月26日(日) 
② 5月30日(木)音声データ送付(4名による対談予定) 締切6月3日(月)
 ※お集まりいただいたボランティアの人数によりますが、一人5分程度を予定しています。

お申し込みは
件名に『書き起こしボランティア』申し込みと書いて
下記アドレスまでお申し込みください。
print@citylights01.org

どうぞよろしくお願いいたします。

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 3

3
「今の世の中、メールでポンとボタンを押すだけで、写真でも映像でも送れるけど、
 エアメールって温もりがあるわね。」
佐緒里が、ポストカードを見ている祐一に話しかける。
「ああ、こう言うのって俺も好きだよ。」
「切手の絵も日本と随分違うわね。」
「そうだな、俺たちも何処か行くか?エアメール出しに。」にんまりと佐緒里を見つめる。
「何言ってるのよ、早く腰、治しなさいよ。それにさあ、私、結婚できないかもしれない。」
「どうして?」祐一は、驚いた顔で佐緒里を見つめる。そして
「やっぱり・・・ごめん、俺が悪いんだね。」と力なくつぶやいた。
「うん?あれ?話してなかったっけ。エルザちゃんのブーケトスの話。」

再び、元気とエルザの結婚式。
「ブーケトス、行きますよーっ」
エルザのもとに、集合する乙女たち。輝く瞳はブーケに釘付けである。
エルザがブーケを投げる!
きっと映画だと、その時が一瞬、静止画面になり、空飛ぶブーケや乙女たちの表情などがスローモーションで再現されると思うのですが、ここは『映画祭物語』みなさまの脳内カメラの稼働をお願い致します。
青空に高く弧を描くブーケ。
着地点を目指す乙女、または、元乙女・・・。
「ママァ~・・・。」
現れたのは、赤いメガネをかけてママをさがしている女の子・さっちゃん。
その様子があまりの可愛く、乙女たちは一瞬、癒されモード。
そして神聖なるブーケは、さっちゃんの足元にポトリと落ちたのでございます。
息をのむ乙女たち。
「おねえさんが取ってあげるよー」
「あぶないよー。」
乙女たちの声が飛ぶ。
だけど、目が見えないさっちゃんは、日ごろからママに、
「出来る事は自分でやりなさい!」と言われ続けています。
「ママに怒られるもん。自分で取れるもん。」
と言って、ちょこんとしゃがみ、手探りでブーケを取り上げたのです。
近くで見ていたママが、飛んできて「さっちゃん、良かったね。」と言って、ぎゅっと抱きしめました。
その時、ブーケについているキラキラ光るビーズと同じくらい、ママの瞳の涙も光っていました。
さて、5歳のさっちゃんがブーケを取ったということは、次に結婚するのはさっちゃんと言うこと。素直にブーケの伝説を信じる乙女たちには、酷な瞬間。
あと15年、いや20年は縁遠いとのご託宣、あたるも八卦、当たらぬも八卦ではありますが、おめでたいはずの結婚式で泣き崩れる乙女がいたとか、いないとか・・・。

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 2

2
さかのぼる事、2か月前。とある結婚式のひとこま。
ひな壇に並ぶ、エルザと元気。
第5回シティライツ映画祭の実行委員で運命的な再会を果たした二人である。
純白のウエディングドレス姿のエルザ、まとめあげた髪にティアラのダイアモンドが輝く。
元気は グレーのタキシード姿で、カチンコチンに緊張している。新郎と言うより、まるで七五三の男の子である。
「来週にはアメリカに出発だってなあ」音松が佐緒里に話しかける。
「そうみたいですね。元気くん、映画祭の後に希望の会社から内定の連絡があって研修も兼ねてアルバイトをはじめたでしょ。将来有望らしくて春から、アトランタ勤務に大抜擢だって。」
「そういやあ、エルザちゃんも、交換留学とかでアトランタの大学に行くんだよな。親御さんとしたら、元気くんが一緒にいてくれた方が安心だろう。」
音松が頷く。
佐緒里も納得している。
「運命に後押しされているようですね。」
話しを聞いていた七海が、小声で話しかける。
「そうではないですよ、二人の愛が明日への一歩に力を与えてくれたんです。」
「そうね、二人の愛の力は最強ですものね。」
佐緒里が眩しげにエルザと元気をみる。
音松はしみじみとうなずいている。
「佐緒里さんの彼は元気かい?」
「音松さんは、そうか、出会った時、一緒だったんだ。」
佐緒里が恥ずかしそうに言葉をつづける。
「えへっ、結婚することにしました。」
「そうか、おめでとう。」音松は、大喜びで佐緒里の手を握る。
「佐緒里さんも、明日への一歩を踏み出すのだね。」
その時エルザの声が響く
「ブーケトス、行きますよーっ」
「待ってーっ」
佐緒里と七海が元気よく手を挙げ、エルザの方に走って行く。
ブーケが宙を舞う。
女性達の手があがる。
さて、幸運のブーケを手にした女神はいったい・・・・。

「一歩にまつわるエピソード」募集のお知らせ

映画祭実行委員のはるみです。
6月30日の映画祭パンフレットへのご協力をお願いします。

今年のテーマは「みんなで踏み出そう!明日への一歩を」
このテーマにちなんで、皆さまから一歩にまつわるエピソードをお寄せいただき
掲載しようと思いました。

今の職業につくきっかけだったり、映画や音楽が好きになった始まりのこと。
一歩外に出て感じた風だったり花の香りだったり、一歩踏み出したせいで、大変な
ことになってしまった事などをお寄せ下さい。

ひょっとしたら、エピソードを読んでくださる方々の次の一歩のきっかけになるかも
しれません。

お寄せいただいたメッセージは、上映作品の一つである『遠い空の向こうに』のロケットを
イメージしたページに掲載予定です。

みなさま、どしどしお寄せください。
お友達のみなさんにも是非お知らせください。

  ・40字程度の短文(俳句、川柳もちろんOK)
  ・氏名若しくはハンドルネーム、匿名希望の場合はその旨

下記アドレスまでお送り頂くか、コメント欄にご記入ください。
 ippo@citylights01.org

 ・締切 5月26日(日)
 
 <文例>
  ・映画祭に参加して、映画好きになった。
  ・赤ちゃんの初めてのヨチヨチ歩きの瞬間に立ち会った。
  ・一歩踏み出したら、いけないものを踏んでしまった、明日は気を付けよう。
  ・がんばったら目標に一歩近づけた。
  などなど・・・。

2013/05/11 18:09 |お知らせCOMMENT(3)TRACKBACK(0)  

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 1


今年のゴールデンウィークは、暖かだったり寒かったりで、北風と太陽が本当に勝負をしているのではないかと思うほどである。
「あぁー、いい天気なのにまったくよう。」
竹井祐一(たけい ゆういち)は、病院のベッドの上で半身をおこし、カーテン越しに見える富士山を眺めている。
「あら、目が覚めたの?」
一輪挿しを持った吉本佐緒里(よしもと さおり)が、病室に入ってくる。
「今日は、暖かいからちょっとだったら窓開けていいってドクターからの伝言。」
そう言うと窓をあけた。
「気持ちいいなあ、緑の香りがするよ。」
祐一は、目を閉じ気持ちよさそうに大きく深呼吸した。
「富士山もきれいね。」と佐緒里が微笑む。
「佐緒里、ありがとう・・・ゴホッゴホッ。」
祐一は、苦しそうに顔を歪め横になる。
佐緒里は、慌てて窓を閉める。
「佐緒里、ごめんな。」
「私こそごめんなさい、窓を大きく開けすぎちゃったね。大丈夫?」
苦笑いする祐一、愛おしむように佐緒里をみつめる。
「ちがうよ、結婚式・・・今日だったろう。」
「うん、そうだったね。・・・あっ、そういえば富士山が世界遺産になるって、ビッグニュース。やったね!」
「佐緒里・・・。」
「この間、結婚式が延期になったことをあかりさんにお知らせしたら素敵な言葉をいただいたの。「好きと感じたら、それをトコトン大切にしなさい」って、たとえそれが誰も見向きもしない事柄であっても・・・。」
「ごめん・・・。」
「まぁ、結婚式前に、独身最後とか何とか言って飲み歩き、風邪こじらせて、肺炎併発して高熱出して、ふらふらして階段から落ちて腰の骨を折るって言う人を好きになったのだから仕方がないじゃない!」
佐緒里は、男前な性格である。

「そういえば、元気くんたちからエアメールが届いたわよ。」
佐緒里は、バッグからポストカードを取り出し祐一に渡した。

みんなで踏み出そう!明日への1歩を プロローグ

プロローグ

「あの映画を観たのは、あの人との初デートだったかしら?」
今年77歳の喜寿を迎えた勢津子は、今日観た映画を思い出していた。
「『素晴らしき哉、人生』、1954年公開と言っていたから当時の私は19歳。あれから58年も経ったのね。70歳で光を失ってから、映画なんてと思っていたけれど昔の映画を観ると、気持ちは当時に戻るのねえ。」
JR総武線のシートで揺られながら、感慨にひたっていた。
「おばあちゃん、今日は連れてきてくれてありがとう。」
孫の周人が、勢津子の隣に座っている。
「おばあちゃんの方こそ、ありがとうね。周人が一緒だから心強かったよ。」
周人の顔が、こころなしか得意げに見える。
「ねえ、おばあちゃん。」
周人が勢津子の顔をのぞきこむ。
「映画をつくる人ってなんて言うの?」
「監督って言うんだよ。」
「ふぅーん、じゃあ、僕、大人になったら監督になる。」
周人はそう言うと、今日おばあちゃんと行った『シティライツ映画祭』のパンフレットを
大事そうに抱えた。

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