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みんなで踏み出そう! 明日への一歩を 10

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「お父さん、『どら平太』の音声ガイドモニター、無事に勤められました。見守ってくれてありがとうね。」
勢津子は、夫の遺影に話しかけている。
「孫の周人も、立派に育っていますよ。きっと生きていたら、可愛くって仕方がなかったでしょう。娘が結婚する時、あれだけ反対して、結婚式では男泣きに泣いて…。今では懐かしい思い出ですね。私は、あなたが泣いたのを見たのはその時だけでしたね。両親が亡くなった時も泣かず、取り仕切っていたものね。少々冷たいかしら?とも思ったけど、無言でじっと遺影を見つめるあなたの眼差しを見た時、あぁ、あなたなりに悲しんでるのねと思って、その男っぷりに改めて惚れ直しちゃったのよ。…あら、恥ずかしいわね。それじゃあ、今日も1日、見守っていてくださいね。」
「おばあちゃん、そろそろ出かける時間だよ。」

映画祭の成功を祈願して、両国にある江島杉山神社にお参りに行くのである。

江島杉山神社とは・・・。
視覚障がい者に、針、按摩を職業としてあたえた杉山和一総検校を祀った神社で、点字による石碑などがある。(江島杉山神社公式ホームページ http://ejimasugiyama.shin-to.com/)

「周人は、今日はさっちゃんも一緒だね。」
「うん。」周人は恥ずかしそうにうなずく。

二人の出会いは、『どら平太』の勉強会。
さっちゃんのママが、エルザと七海の大学の先輩で同じサークルだったことから見学に来たのである。大人たちの中に交じって、子どもが二人。当然、大の仲良しになった。

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さて、さてさて、諸事情により物語はぐーんと飛び・・・。
映画祭まで残すところあと2週間。
勢津子と周人が参加した『どら平太』の音声ガイド勉強会は無事に終わり。
祐一が参加できなかった『遠い空の向こうに』の字幕収録も終わり。
音松、はるみがモニター参加していた『遠い空の向こうに』の音声ガイド勉強会も無事に終わり。
元気とエルザが飛び入りで登場している、映画祭パンフレットの原稿も無事完成。
そして、トークショーやロビー展示などの準備も着々と進んでいる。
あとは、映画祭の日がお天気であること、沢山の人が来てくれること。来てくれたみんなが楽しめる1日であることを願うばかり・・・。

「早くエルザお姉ちゃんに会いたいな。」
さっちゃんは、うれしそうにしています。
「そうだね、映画祭の日まで良い子にしていたらエルザちゃんに会えるよ。」
パパが、にっこりして話しています。
今日は、父の日です。
ママは、パパにごちそうを食べてもらおうと一日中ごちそうを作っています。
日ごろ、仕事で忙しいパパは、さっちゃんとお話することが何よりの癒しです。
「さっちゃんは、大きくなったら何になりたいの?」
「うーん、エルザお姉ちゃん。花嫁さんだし、外国に住んでるし、元気お兄さんの奥さんだし。うーん沢山なりたい。」
「そうか、エルザお姉ちゃんになりたいのか」
パパは、リビングに飾ってあるブーケに眼をとめました。
「さっちゃんもお嫁さんになるのか・・・。」
こんな時、パパは複雑な心境のよう。
「さっちゃんは、誰のお嫁さんになるの?」
パパは、答えを期待している様子でさっちゃんを見る。
「うーん、周人お兄ちゃん!」さっちゃんは、元気よく答える。
パパは、こころなしかガックリしている。
こんな時、父親は「パパ」と言う元気な答えを期待しているのか・・・。
「周人お兄ちゃんって、誰かな~。」
「ドラえもんの周人お兄ちゃん!」
・・・どらはどらでも『どら平太』なのだけど・・・。

みんなで踏み出そう! 明日への一歩を 8


翌日。
「えーっ、只今、日曜日の32時、その日のうちに来たでしょ?」
字幕朗読に参加していた七海が、祐一の病室に顔を出した。
「何よ、32時って、朝8時じゃない。今は10時だから、それを言うなら34時よ。」佐緒里が素早く突っ込む。
「だって、映画祭で総合司会をしてくれる、演劇結社ぽっちゃりぽっちゃりの朗読会のブログのパクリだもんね。フェイスブックでも結構、話題だったのよ。」
七海は、笑いながら話す。
「あれは斬新で使いたくなるフレーズね。」
「そういえば、「映画祭物語」や「明日への一歩」の募集もフェイスブックで流れていたわよね。」
「映画祭の情報も、こんな風にして広がって行くといいよな。」祐一も頷いている。
「そうね。こうした映画祭があるよーってしってもらうことが、次につながるし。興味がある人は来てくれるものね。」
「最近、シティライツのみんなでも、随分やってるよね。」七海の瞳が輝く。
「何かな?」佐緒里が首をかしげる。
「えへ、宣伝しちゃおっと!」
「そうくると思った・・・。みんな、シェアやいいねをしてくれると良いね。」
佐緒里と七海は、大きくうなずく。

「ところで、字幕朗読はどうだったんだ?」祐一が急かす。
「ん?あ、ナイショ。ナイショって言いに来たの。
詳しくは当日のパンフレットを読んで欲しいから言っちゃダメなの」
それだけ言うと、七海は足早に 病室を後にした。

祐一は、口をあんぐりしたまま見送るしかなかった。
 そう言われちゃ仕方がないね。

みんなで踏み出そう!明日への一歩を 7


「映画祭には、退院できるよ!」
祐一は、病室に顔を出した佐緒里に満面の笑みを浮かべ報告した。
「ふぅん、良かったねー。」佐緒里は何処か涼しげにこたえる。
「えっ、何?」祐一は、そんな佐緒里の態度に首をかしげながら、何かしでかしたか考えている。意外に小心者だったりする・・・。
「今日は何の日かな?」
佐緒里の言葉に、祐一の頭の中はフルスピードで回転中である。
「ゴメン、すまなかった。」謝る祐一。
「はぁ?何かさぁ。取り敢えず謝っておこうって態度が見え見えだよね。」
今日の佐緒里は、どうやら機嫌が悪い。
「謝る相手は、私じゃないでしょ! 母の日!」
「何だ、そんな事か。」祐一は急に得意げに話はじめる。
「昨日、ポストカード送ったよ。 元気たちみたいに、ここから見える富士山を写真に撮ってポストカードにした。あ、富士山の上にロケットが飛んでいく絵を描いたけど。ほら、映画祭のチラシっぽく。」と言って枕元に置いてある第6回City Lights映画祭のチラシを
手に取った。
今年のチラシは、二人の侍が、真っ直ぐな飛行機雲を描いて飛ぶロケットを見上げている絵が描かれていて、背景には富士山もある。

「そうなのね。私もメッセージ書きたかったな。」
「なぁ、それはそうと今日って、字幕朗読の収録日じゃないか。行かなくていいのか?」
「今年は、あなたが入院しているし、七海さんに代わってもらったの。」
「そうか、様子を聞きたかったな。」
「多分、明日とか誰かお見舞いにくるんじゃない?」

 字幕朗読とは、洋画など吹き替え版の無いフィルムやDVDの場合に、声優ボランティアの皆さんで、セリフを読み録音した音声を音声ガイドと共にラジオで流すのである。
声優ボランティアに参加してくださる皆さんは、俳優養成学校の学生さんや一般の方、もちろん視覚障がい者も多く参加している。
 
「じゃあ、明日まで待つか~。」チェッと言う顔をして、祐一はうらめしそうにチラシを眺めた。

『一歩にまつわるエピソード』ご協力ありがとうございました。

映画祭実行委員の遥はるみです。
「一歩にまつわるエピソード」への募集、26日(日)を過ぎましたので、締め切らせていただきます。ご協力ありがとうございました!

皆様からお寄せ頂いた素敵なメッセージを整理しながら、何度も読み返し「受付担当をさせていただいてよかったなぁ」と感謝です。
パンフレットを楽しみにしていてくださいね!

では、6月30日映画祭、江戸東京博物館でお会いしましょう。

チケットまだだよ~という方は、こちらからどうぞ。

■チケットのご購入について

※前売り券のご購入は、2013年6月25日まで。
  ゆうちょ銀行へのお振込によるチケットのご購入をお願いします。

 □ウェブからのお申し込み

下記のフォームへ必要事項を入力して、お申し込みください。
http://www.citylights01.org/eigasai/ticket.html

 □メール・電話・FAXによるお申し込み

電話・FAXの方はシティ・ライツ事務局(03-3917-1995)まで。

メールの方は、宛先 eigasai6@citylights01.org /件名に、「映画祭チケット申し
込み」と書いて、
本文に下記の項目を明記の上、お申し込み下さい。
1.お名前
2.フリガナ
3.チケットの種類(作品名)と枚数
4.チケットの送り先(ご住所)
5.電話番号
6.駅からの誘導希望の有無 (JR両国駅 /大江戸線両国駅のいずれか)

※ なお、前売りチケットは 1作品:800円/2作品セット券:1500円 の2
種類となります。


■お問い合わせ■

バリアフリー映画鑑賞推進団体 シティ・ライツ
TEL・FAX 03-3917-1995
E-mail eigasai6@citylights01.org

2013/05/29 07:46 |お知らせCOMMENT(0)TRACKBACK(0)